攻彼顧我。
東京に住んでいる友人と初めて会うのが海外って、なかなか面白いよねって笑った。
同じ日本に住んでいるのにね、初めましてが他国、2人とも行ったことのない土地。
でもそれって絶対楽しいし、とりあえず無事に帰国しようね。
窓の外の景色が変わろうとしている2月。
まだ先だけれど、変わってゆくことが決まったわたしの町。
たぶん、夏の花火も見えなくなる。
去年が最後だったのかな、南の空に見えたのに。
開発されてゆく街は生き生きとしていて、人や車が増えて、クレーンが空に向かって長い腕を伸ばしていた。
捨て台詞を吐いて消えてゆく人は皆そっくりで、捨ててわたしにぶつけたと思っている言葉が自分の後ろ頭にぶつかっていることに気づいていなかった。
いや、気づいているのかも。
気づかないふりをしている、そんなところも似ていておかしい。
2月、なかなかに忙しい2月だよ。
愛されたパンダが中国に帰って、涙を流す人を見た。
パンダは愛される。
その瞳は少し冷たそうなのに。
なんて言ったら、そんなことはないとか、そこがまた可愛いんだとか言われそう。
好きなものは、何がどうでもかわいい。わかるよ。
尖った言葉たちの不在。
こんなに時間が経ったねって、
流れた時間が答えなのかもしれないねって、そんな話をしていた。
お互い深呼吸をして、会話ができた気がした。
返ってきた答えは想像していたものと違いはなくて、少し可笑しくて、手放しで堤防の上を歩いた感覚、踏み外すことなんて怖くなかったあの日みたいだった。
誰かを思う時、出会った時、別れる時、
よく眠ってよく食べて、健康に、幸せでいてねと思うのは、そういう風に言葉をかけるようになったのは誰のおかげなのかわかってる。
誰に出会って自分が今の自分になれたのか、よくわかってる。
いつかちゃんとありがとうが言えますように。
最近気づいたのは、自分が食べ物の中でお寿司が結構好きだということ。
いろいろ好きなものはあって、その中の一つだと思っていたけどそうじゃなかった。
意外に、他のもの押し退けて仁王立ちしてる、サーモンやブリやイカが。
サーモンやブリやイカが仁王立ちしてるってどういうことよ。
さて今夜も勉強して、寝よう。
鳥たちは再び羽を広げ風が変わったと感じる。
自宅近くのパスタ屋さんはとても人気で、いつも人の列が絶えない。
この場所に越してきて3年も経つのにまだ一度も入ったことがない、きっと美味しいパスタなのに。
今日はお休みのようだった。
水曜日がお休み、美味しいパスタ屋さん。
日々は流れていて、いろいろな事やもの、人も変わってゆく。
そうだね、今日嬉しかったのはやっと海を渡れそうだとわかったこと。
今までが難しすぎたから、まだもちろん日付も何も決めていないけど、壁はもうないようなものだというだけですごく楽しみ。
くじらさんは、寒くないかな。
珍しいから、この目で見られることはもう一生ないから、そんな理由で「かわいそう」って言いながら見に行く人間に悲しかった。
人は残酷だ、
183。
母国語以外の言語をこんなに勉強したのは初めてで、英語なんかよりずっと、何を言っているのかわかるようになった。
もともと英語があまりわからないのもあるけど。
日常会話くらいはできていた手話も、使わないうちに忘れてる部分が多くなった。
語学の勉強をすると世界が広がると言うけれどそれは本当だった。
気がつくとわかるようになっていて、それに気づくと嬉しくて頑張る力が湧く。
成長は階段だから、次のステップに昇る前に平坦が続く。それさえも楽しい。
きっとこれからもずっと高めていけると思う。
勉強を始めて、今日で183日。
もう半年。
独学でどこまでいけるか、楽しみだな。
スイッチ。
六角が、入ってなかった。
自転車のライトの調子が悪くて、数日前に自転車屋さんで見てもらったのにやっぱりおかしいから新しく買い換えた日。
ホームセンターで購入して帰宅して、自転車に取り付けようと開封してみた。
あれ?これどうやって取り付けるの?六角…前使ったものがあるからと思ったらサイズが違う。
二つあったのにどちらもライトの穴より少し大きかった。
そして説明書を見てみたら付属品の欄に「専用の六角」。
専用の六角?
開封する時に落としたの?どこにもない。
何度も何度も確かめた。
ない。
…もともと六角が、入ってなかったんだ。
ホームセンターに電話したら、レシートと現物を持ってきてください〜すみませんね〜。
電話口でのお店の方の態度。
これは少し前の出来事。
その週は嫌なことだらけの週だった。
職場でもプライベートでも、こんなに嫌なことが続くの?って思うほどで。
そこにとどめを刺されたようだった。ホームセンターまでは少し遠い。
今週はだめだ。
全部捨てたい、全部忘れたい。
なんであの人はあんな言葉を使ったのか、なんであんなことができなかったのか、あれも嫌だったし、あれも最悪だった、全て消えてしまえってベッドに寝転んでたら電話が鳴った。
経緯を話したんだよ、子供みたいに。
ねぇねぇ聞いてよ、これがこうでね、昨日はこんなことがあって、しかもね、って。
それでね、六角がねって。もういやだよって。
すると相手は、
「六角がちゃんと入っていて、今日ライトをつけることができて、夜に自転車に乗っていたらね、きっと事故に遭ったんだよ。だから入ってなかったんだよ。でもお店の人はコラ!だね。」
と言った。
吐き出したわたしの中の嫌な出来事たちが、キョトンとした顔をしていた。
悪さをしようとしていたのに、呆気に取られた感じ。
そばに、こんな人がいてくれてよかった。
そうだよね、きっと、六角が入ってなくてよかった。
桃のショートケーキ。
人は可能性に満ちている。
今日の自分と明日の自分が違っていても何もおかしくはないし、それは瞬間瞬間でも同じ。
留まり続けることも変わり続けることも受け入れられるようになりたい。
サイコロのように多面的な生き物だとして、面が増えて増えて球体に限りなく近づくようになるからきっとうまく転がってゆけるのだと思う。
面が少ないと平坦な道さえも振動だらけ傷跡だらけの日々だ。
今日は1日とても頑張ったんだよ。
つくったり、聴いたり、話したり、読んだりしていた。
無事に過ぎて行った日曜日。
わたしが木なら、枝は幾つもに分かれ、成る実は一つじゃない、一種類じゃないよって、言っていた。
そうだね。それで間違ってない。
いつも可能性に満ちていて、明日も未来もわからないよ。
一つでも多くの新しい実をわたしも自分の木に成らせたいし、あなたのも見たい。
52ヘルツ。
きっと大事なものの数は増えてはいなくて、増えたのはそれらの根だと思う。
わたしの中にしっかり根を張って深く、深くまで張り巡らせて、時々切なくて悲しくて、毎日あたたかくって幸せだ。
聴く音楽も変わってないよ。
自分以外の誰かが今日おいしいものを食べていたりゆっくり眠れていたり、
走る車の窓から綺麗な空を見たり、そんな事が嬉しい。
どうか傷つかずに生きていてほしいと思ってる。
土をあたためて、栄養をたくさん含むやさしい土でずっと、ずっと続いていけますように。
わたしは昨日美味しいものを食べて、優しくしてもらえてたくさん笑ったから、わたしの大事な人も大事な人たちもそうでありますように。
足りないならいつでも呼んでくれますように。
たぶんわたしやあなたがくじらでも、鳴き声は52ヘルツではないと思うんだよ。