スイッチ。
六角が、入ってなかった。
自転車のライトの調子が悪くて、数日前に自転車屋さんで見てもらったのにやっぱりおかしいから新しく買い換えた日。
ホームセンターで購入して帰宅して、自転車に取り付けようと開封してみた。
あれ?これどうやって取り付けるの?六角…前使ったものがあるからと思ったらサイズが違う。
二つあったのにどちらもライトの穴より少し大きかった。
そして説明書を見てみたら付属品の欄に「専用の六角」。
専用の六角?
開封する時に落としたの?どこにもない。
何度も何度も確かめた。
ない。
…もともと六角が、入ってなかったんだ。
ホームセンターに電話したら、レシートと現物を持ってきてください〜すみませんね〜。
電話口でのお店の方の態度。
これは少し前の出来事。
その週は嫌なことだらけの週だった。
職場でもプライベートでも、こんなに嫌なことが続くの?って思うほどで。
そこにとどめを刺されたようだった。ホームセンターまでは少し遠い。
今週はだめだ。
全部捨てたい、全部忘れたい。
なんであの人はあんな言葉を使ったのか、なんであんなことができなかったのか、あれも嫌だったし、あれも最悪だった、全て消えてしまえってベッドに寝転んでたら電話が鳴った。
経緯を話したんだよ、子供みたいに。
ねぇねぇ聞いてよ、これがこうでね、昨日はこんなことがあって、しかもね、って。
それでね、六角がねって。もういやだよって。
すると相手は、
「六角がちゃんと入っていて、今日ライトをつけることができて、夜に自転車に乗っていたらね、きっと事故に遭ったんだよ。だから入ってなかったんだよ。でもお店の人はコラ!だね。」
と言った。
吐き出したわたしの中の嫌な出来事たちが、キョトンとした顔をしていた。
悪さをしようとしていたのに、呆気に取られた感じ。
そばに、こんな人がいてくれてよかった。
そうだよね、きっと、六角が入ってなくてよかった。