記憶機能は血液にある。
寒い日だった。
職場でもマスクをしている人が増えた。
わたしも少し風邪気味かもしれない。
街はクリスマス、クリスマス。
クリスマスと年末のこの雰囲気はわたしはあまりすきじゃないよ。
キラキラも綺麗だけれどなんでもない平日の街や雰囲気の方がわたしはすき。
還らない時間はかなしい。
だけど先生は、前へ進もうと言った。
荷物なら半分持つからと言ってくれた。
大丈夫。
きっと大丈夫。
今の自分と過去の自分と未来の自分は向き合うと顔さえ違うわたしたち。
過去の自分を救うのも、未来の自分を支えるのも今の自分でしかなくて、すこしうんざりしつつ安心したりした。
なにが不遜かってそれはそれは。
イヤホンから聞こえる歌と歌の合間の空白に聞こえたのはうるさすぎるくらいの河の音。
血管を流れる血液たちの、その音。
明日もきっと寒い寒い朝。
肩をすくませながらわたしはいつものようにいつもの場所へ向かう。
朝を灰色だと言った太宰治はどんな気持ちだったんだろう。
その目で見たら夜は白かったりするのかな。